予算自動削減に負けずにアメリカを強く保て!
Kelly Ayotte上院議員が、「The Project for the Common Defense: Keeping America Strong for the Next Generation」というタイトルで国家安全保障についての講演をヘリテージ財団の大講堂で行った。
考えてみると、ワシントンではアジアでのアメリカの役割であるとか、中東での役割とか、地域的な安全保障についての議論が多い。アメリカの安全保障に関する全体的な枠組みについては、実は、あまり聞く機会がないので、ここで紹介したい。
Ayotte上院議員は、最初に、アメリカは国家安全保障に関する戦略が足りないとし、アメリカの国益と政策の間にミスマッチがある、と話し始めた。
ミスマッチの例として海軍とミサイル防衛システムをあげた。
現状では、海軍には306艦の潜水艦と船が必要とされているが、2015年には現在より少ない270艦を所有するにとどまると見積もられている、という。しかもこの数字には予算自動削減が考慮されておらず、230艦にまで減少している可能性があると海軍作戦部長が語ったとAyotte議員は強い懸念を示した。さらに、Ayotte議員は、76艦が不足する現状にもかかわらずアジア太平洋地域だけではなく中東での海軍の必要性が高まっているとした。
そしてAyotte議員は、シリアへの介入は、最優先されるべきとした。なぜならシリアの混乱はシリアだけではなくイランなどに影響を与え、さらに化学兵器への心配も強調した。
Ayotte議員は、ミサイル防衛システムについて、昨日、ペンタゴンから北朝鮮やイランなどからの制限的な大陸弾道ミサイルに備えることを最優先して準備しているとの報告をうけた、という。さらに、イランは2015年までにアメリカ本土への攻撃を可能にするICBMを持つ可能性が高いことも報告されたとし、今までのミサイル防衛の想定敵国はロシアであるので、現状を考慮しての再配置の重要性を語った。
Ayotte議員は、アメリカには以下の5つの国益があると語る。
1つ目は、最優先事項で、アメリカの土地が破壊的な攻撃をうけないようにすること、2つ目は、宇宙空間とサイバー空間も含み、アメリカ経済と世界経済に重要な貿易を円滑にする環境を維持することである。3つ目は優位な形でパワーバランスを均衡させることであり、4つ目は、アメリカの経済を回復させることとアメリカだけではなく世界の人々のためになるオープンな国際経済システムを構築・維持すること、そして5つ目は、民主主義と人権を促進することである、とした。
さらに、Ayotte議員は、国益と政策のミスマッチを減らすためには以下の4つの考え方が必要だとした。
1つは、アメリカのリーダシップに変わる国は存在しないということ、2つ目は、アメリカは一国で安全保障に対峙するのではなく、強力なパートナーシップを構築して同盟国と協力することが大前提であること、3つ目は、アメリカはアメリカ軍の経済的基盤を修復すること、4つ目は、予算の削減という状況の中でも武器と軍隊をきちんと準備すること、と語った。
キャピトルの丘
先週、アメリカでは独立記念日を迎えた。昨年とうってかわって過ごしやすい初夏であったが、独立記念日を迎えて、ワシントンも暑い夏を迎えた。
予算の縮小で昨年よりも小ぶりになった花火大会を見ながら、南北戦争の勝敗を決めたゲチスバーグを訪れよう、ということになった。まさに7月4日あたりにゲチスバーグの戦いがあったからだ。
ゲチスバーグの戦場跡地は、まさに広がる草原だ。この上ない見晴らしの良い草原でアメリカ市民は南北に分かれて戦っていた。この時代の戦争は人対人のぶつかり合いであることを広がる土地が語っている。
現在の戦争は、サイバーや宇宙の戦略まで必要になっている。150年の間に人間の生活空間は海も空も超えている。Ayotte議員もサイバーと宇宙について言及していたし、今年に入ってからアメリカ政府は、サイバーと宇宙の日米安保協力の必要性を強調するようになっている。Ayotte議員の講演を聞くと、サイバーと宇宙を使った日本周辺の情報収集・分析で、日本の役割を期待しているということの想像がつく。この新しい分野は、まだ未開だけに今後、深追いしていきたいと思っている。
Ayotte議員が大前提として語っていた「民主主義」と「人権」の原点はゲチスバーグにも存在していた。リンカーン大統領は11月18日夜、訪問したゲチスバーグで、有名なゲチスバーグの演説を書いた。そして翌日、現在、戦没者記念地となっている場所で「人民の人民ための人民による政治」と演説した。この言葉は、まさに、アメリカが掲げる「民主主義」と「人権」を誰にでもわかりやすい言葉で表現している。