2月1日、インディアナ州のミッチ・ダニエルズ知事(共和党)が、労働権立法(Right-to-Work law)に署名した。
この法律は、労働者の雇用条件として組合への強制加入を禁じている。組合への加入が義務付けられていたのかと、日本の感覚から見ると驚くかもしれないが、なんと、多くの州では組合加入が法律で義務付けられている。
インディアナ州は、 23番目に組合への加入に選択権を与えた州にあたる。ちなみに、アラバマ、アリゾナ、アーカンソー、フロリダ、ジョージア、アイダホ、アイオワ、カンザス、ルイジアナ、ミシシッピ、ネブラスカ、ネバダ、ノース・カロライナ、ノース・ダコタ、オクラホマ、サウス・カロライナ、サウス・ダコタ、テネシー、テキサス、ユタ、バージニア、ワイオミングにはこの法律が既に存在する。
だが、インディアナ州は「 Rust Belt」と呼ばれる地域では、初めて労働権立法を通過させた。この地域はアメリカ中部から北東部の重工業地帯で、かつては、鉄鋼で栄えたが、現在では衰退している。Rustは錆の意味である。Rust Beltの代表州は、自動車産業の集積地として有名なミシガン州で、巨大な自動車労働組合(United Auto Workers)がある。
ミシガン州に代表されるように、「 Rust Belt」では、とりわけ労働組合の影響力が強い。インディアナ州で労働権立法が確立されたことは、ある意味、アメリカに起きている変化を表している。
Reason.comによると、2002年から2009年で、この法律が通った州と通っていない州の間では、雇用増加で2.3%の違いがあるという。
オハイオ州立大学の経済学者リチャード・ベッダーは、「この法律と企業誘致には確実に相関関係が存在する」としている。
ダニエルズ知事は、労働権立法の最大の理由は「雇用」と言っている。さらに、フォルクスワーゲンに工場誘致を試みたが、労働権立法のない州にはまったく興味がない現実に直面した時に、労働権立法を決心した、という。
全米が高失業率に悩み、その上、衰退産業を有する州では、企業誘致は死活問題である、と言えよう。
ヘリテージ財団にとって労働組合への強制加入は、労働者の自由を妨げ、企業の自由を阻害するものであるとし、この法律を支持してきた。
この法律が通過したことで、労働者に労働組合に入る権利と入らない権利が認められたことになる。
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キャピトルの丘(普天間ニュース錯綜の背景)
2月7日ワシントンDCで日米審議官会議が行われ、普天間基地移転と海兵隊の一部機能のグアム移転を切り離して進めることで合意した。これを受けて、玄葉外相は記者会見を行い、同時に、国務省はプレス・リリースを流した。
日米の発表が足並みを揃えた理由は、先週、日米に流れた情報の錯綜だった。
先週、ブルームバーグが「海兵隊の一部をグアムへ移転」し「普天間からの基地移転と切り離す」と報道し、その後、アメリカ時間の金曜日の夜、沖縄タイムズが「ペンタゴン、辺野古への基地移転をあきらめると日本政府に伝達」という内容の記事が流れ、ワシントン DCのマスコミは、確認作業のために緊張が走っていた。
結局は、米軍はグアム基地移転と普天間基地移転を切り離しグアムへの基地移転をまず進めるというのが真相であり、ブルームバーグの記事は正しかったが、沖縄タイムズの一報は、誤報だった。
ニュースに混乱はつきものともいえるが、今後も普天間に関するニュースの錯綜は起こり得るので、ヘリテージ財団という地の利を活かして、その背景を調べてみた。
ヘリテージ財団の普天間問題を担当する上級研究員ブルース・クリンガーは、誤報の背景は誤認と強い思いではないかと説明する。
クリンガーによると、ブルームバーグの記事は、非常に誤解しやすい内容だった、という。ブルームバーグの、普天間に駐在する海兵隊の一部をグアムに移転させるという内容は、普天間基地移転を含むグアム協定をキャンセルしたと理解する可能性はあり得るだろう、と語る。
そして、その後に流れた沖縄タイムズでは、そこに意図が入った可能性がある。
上記のように、誤解しやすい内容だけに、強い思いがあればあるほど誤解する可能性は高い。確かに今回の誤報は、沖縄の人々が現在のグアム協定に反対していることを、再度、印象づける効果はあった。
クリンガーは、それらの記事を受けて「玄葉外相も先週『記事は間違っている』と記者会見するしかない状況だったのだろう。」と語る。
普天間基地移転を含むグアム協定に関するニュースは難しい。
普天間基地の行方に関しては、ブルース・クリンガーが小論を書いています。
そちらを参照してください。