インターネット・ラジオから流れる音楽は、ラジオと同じ扱いになるのか、それともネットの音楽配信と同じになるべきか?
アメリカでは、これに関する法律がなかなかできないほど議論をよんでいる。
アメリカのラジオ局は、ラジオで流す曲に対してアーチストに発生する著作使用料は払っているが、音楽会社に対して録音使用料を支払ってはいない。音楽会社はラジオで曲が流れることはコマーシャルとしてとらえているという。
それに対し、現在、ネットラジオ曲は、1曲流すにつき著作使用料に加えて、$.0021ドルを音楽会社に支払っている。ネットラジオ局は収入の半分以上を使用料に払っている。
その一方で、この額は、アップルなどの音楽配信のネットサービスが音楽会社に支払う額よりも低い。
音楽会社はネットラジオが使用料を払うことを主張するのは当然だ。それに対し、ネットラジオは、従来のラジオと比べると経営がたちゆかないほど不利な状態にある、と主張することも当然である。
2012年9月ネットラジオの音楽使用料を今よりも低く設定するInternet Radio Fairness Act(IRFA)という法案が、下院で共和党と民主党の両議院の名前で提出されたが、法律になることはなかった。
これから議会が本格化するにあたり、ヘリテージ財団では、ネットラジオとしては最大で80%のシェアを持つといわれるパンドラ社の共同創設者Tim Westergrenと、反対の意見を持つAEIのJeff Eisenachをスピーカとして招き招待者オンリーで別々のランチゼミナールを行なった。
Westergrenは、2011年には収入の半分以上54%を音楽使用料に支払ったと明かした。それに対し衛星ラジオは8%から9%の使用料、ケーブルラジオは15%の使用料しか払っていないと主張した。
彼は、この現状では、「わが社は技術に投資し続けることができない」と不満を表し、「ネット・ラジオの環境を整備するためにIRFAが必要だ」と訴えた。
一方、AEIのJeff Eisenachは、インターネットで映画を配信するNetfixは収入の64%使用料に支払っており、アップル社に至っては80%も使用料を支払っている、と反論した。
さらにパンドラ社は4年前に比べて10倍の大きさになっていることから、ネット・ラジオは現状では利益が上がっている、とし「法律は必要ない」と切り捨てた。
パンドラによるとネット・ラジオのリスナーが占める割合は2002年は12%に過ぎなかったが2012年には39%にまで増え、1億5000万人のリスナーを持っているという。
ネット・ラジオと音楽業界の戦いは、まだ始まったばかりのようだ。
キャピトルの丘
4月3日はフルナー所長の、所長としての最後の日であった。早朝に、フルナーから思いのこもったメールが届いた。
そこには、「今日が私の所長としての最後の日です。」から始まる手紙はレターサイズ(A4)3枚の長さで、ヘリテージの設立時の思いそしてこれからのヘリテージの役割が書いてあった。
フルナーに最大の懸念は、オバマ大統領が作る「大きな政府である」。ヘリテージ財団は、効率的な政府と自由を追求し、次の世代のためのアメリカを目指そうとフルナーは訴える。
手紙には、ヘリテージの歴史にも触れられていた。ヘリテージ財団設立から8年たったときに、ヘリテージと思いを共有するレーガン大統領が生まれたことは、ヘリテージ財団が弱小シンクタンクから有力シンクタンクになる転機であった。
そこには、クリントン大統領時代のことも書いてある。クリントン大統領はヘリテージ財団が書いた健康保険リフォームの法案に2度、拒否権を発動したが、最後には、署名をした、という。
フルナー所長は、4月4日から所長になるジム・デミント新所長にエールを送り手紙は終わっている。
そして最後は、フルナーが常に最後に使う言葉「Onward」。
この言葉がついたメールには、イースターの週末前の金曜は「12時で終わりにしよう」といった季節のメールもあった。
寂しい。
だが、90年代からシンクタンク研究にあたってきた者として、ヘリテージ財団の歴史の分岐点を目撃できることは幸せだと感じている。