連邦議会が見るアジアの今            

COMMENTARY

連邦議会が見るアジアの今            

Mar 22, 2012 1 min read
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Former Senior Visiting Fellow, Japan

Kumi is a former Senior Visiting Fellow.

3月15日(木)ヘリテージ財団では、「アジアに対する連邦議会の見方」というフォーラムが開催され、200人近い参加者が詰め掛けた。

アジア研究のローマン・ウォルターが司会を勤め、3人の議会スタッフがパネルを務め、連邦議会において「アジア」はどのように扱われているかを紹介した。

パネリストを務めたのは、エド・ロイス下院議員のプロフェッショナル・スタッフで貿易を専門とするエドワード・ブリア、ジム・インホーフ上院議員の外交立法スタッフのジョエル・スター、そしてジェームズ・リーシュ上院議員の外交アドバイザーのクリス・ソーシャだった。

日本に関係した議論を3つ紹介しよう。

3人のパネリストの報告で日本について語ったのは一回だけであった。その内容は、離婚した親を持つ子供の「誘拐」問題である。

ジョエル・スターは、上司のインホーフ上院議員は日本に関連する「誘拐」問題に大きな関心を持っていると語った。

この場合も、「拉致」と同じく「Abduction」という単語が使われる。このケースの典型的な例は、日本人妻が、離婚した同時に子供を日本に連れて帰り、元だんなと子供を会わせない、というケースである。

アメリカでは、離婚したとしても子供の育てる権利と義務は、両方の親に認められる。母親の愛情が父親の愛情に勝る、という発想ではなく、両方に同じように子供への愛情があると解されている。

そのため、子供が母親と住んだとしても、父親が育児に参加することは当然の権利であり義務ということになっている。

スターによると、約2000人の子供が、片親と離されて日本で生活しているという。

日本はアメリカやヨーロッパが参加する、離婚した親に子供との面会を認めるハーグ条約を批准していない。そのため、日本人以外の外国人が、その状況を利用して、子供を連れて日本に行く、というケースも存在する。

スターは、「最近、日本政府はハーグ条約批准に向けて進んでいるようだ」と解決に向けた展望を語った。

ワシントンDCを初めて訪問した日本の議員は、アメリカの連邦議員との面会後、「ハーグ条約についての見解を求めらた」という話をよく聞く。ハーグ条約批准は、日本ではあまり知られていないようだが、最近のアメリカ人にとっても非常に大きな興味になっている。

2つ目は、中国の南シナ海と東シナ海への勢力拡大への懸念である。

アメリカのアジア戦略において中国が重要な要素であることは、参加者全員の合意であった。

共和党のインホーフ上院議員と民主党のジム・ウェッブ上院議員は、南シナ海での中国の勢力拡大を懸念して。S.Res217という決議案(Resolution)を2011年6月に上院に提出し、可決した。決議案の内容は、中国の東及び南シナ海での武力行使を非難し、多国間での平和的解決を呼びかけている。ここでは、南シナ海で中国が軍事力を行使することについて遺憾であるとし、南シナ海の海域における航海の自由を守るために、アメリカ軍はこれからも支援する、としている。

フィリピンについても議題にあがった。フィリピンについては、ワシントンの政治界では長年、無視されてきたが、このフォーラムを境に潮の目が変わりそうだった。

司会のローマンもパネリストたちは、南シナ海の平和に関しては、米•フィリピン関係が必要であることを強調した。

3人のパネリストは、中国が軍事費を11%増加させているのに対し、アメリカが国防費を削減することに対して強い懸念を表明した。クリス・ソーシャは「私たちは国内と国外両方の国益を守れてこそ、真の自由を掴める」と語った。

また、スターは、2億7500万ドルもの外国援助が中国になされていることについても疑問を呈した。

最後にTPPである。

クリス・ソーシャは、日本を含めた9カ国とのTPPのほうが重要だと思われるが、現在のオバマ政権は、ロシアとの恒久通常貿易関係(PNTR)に集中している、との懸念を表明した。現在の議会は、自由貿易を重要視しているが、TPPは巨大ともいえるリーダーシップをホワイトハウスがリーダーシップを取らない限り、成功しない、という。

エドワード・ブリアは、日本の参加について、「最初は大歓迎だったが、最近では、頭痛の種になっている」とし、その理由は、「決断できない日本の政局にある」と明かした。



キャピトルの丘

ワシントンDCでは、名物タイダルベイスンの桜の花が満開だ。青い空と薄紅の桜、そして水面の光と風と桜の花の反射は、なんとも心地が良い光景だ。

今年は、東京都が桜の花をワシントンDCに送って100年を迎える記念の年だ。

この時期になると、ワシントンDCは無条件で桜祭りで彩られる。とりわけ、今年は、100年祭とあって、至る所で催し物が開催されている。ニューズアムにも桜祭りの横断幕がかかり、百貨店メイシーズでも桜祭りのイベントが用意されている。

メイシーズでは、店員さんに「桜祭りイベントのときに、日本の音楽を流したいけど」と聞かれた。彼女は、着物も探していると言っていた。

この時期をワシントンで迎えるたびに、桜の花寄贈は、最も成功した日本のパブリック・ディプロマシーではないかと思う。

桜の花は美しいし、それにまつわるイベントは楽しい。ワシントンDC全体が、桜のイベントに包まれる。誰もが無条件に日本の文化に、好感を持って触れざるを得ない。

日本政府は、東日本大震災以後、桜祭り100周年を最も力をいれるパブリック・ディプロマシーの一つとして重要視してきた。困難からの日本復活を告知することが目的である。

ワシントンは記録的な暖かさゆえ、桜の満開は今週で終わってしまいそうだが、復興の扉と位置づけられる桜祭りは来週から約1ヶ月間続く。

ワシントンのアメリカ人だけではなく、世界中からワシントンを訪れる人々に日本の桜を愛でてもらいたい。

そして、日本のパブリック・ディプロマシーがアメリカで開花したように、日米パブリック・ディプロマシー協力が今後、生まれてくるのではないかと、期待する。


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