金正日総書記死亡のニュースは、ワシントンDCでも大きく取り上げられている。
ヘリテージ財団で朝鮮半島と東北アジアの安全保障を担当するブルース・クリンガーは、「北朝鮮はしばらく喪に服することになるので、6カ国会議は当面、進めることは出来ない」と見通している。
米朝の間で、北朝鮮がIAEAの核査察を受け入れた場合、アメリカは毎月2万トン、合計24万トンの食糧援助の約束をしている、という噂があるが、クリンガーはこの交渉も遅れる、と推測する。
クリンガーによると、2008年金正日が脳梗塞で倒れたときには、全く後継者の準備が出来ていなかったので、その後は、後継者、金正恩への準備が進められるようになった。
しかし、金正日は、父、金日成が生きているときから、政権を掌握していたが、金正恩は、政権運営にはほとんど参加していない。しばらくは、不安定な状態が続くことは確実視されている。
クリンガーは、「スイスで教育を受けたことから、国を改革する可能性もあるが、政治的基盤が弱いだけに、党に頼らざるを得ない。そのため、今の体制を引き継ぐと考えたほうが自然だ」と見通している。
クリンガーに「拉致問題」について聞いた。
残念ながら、優先順位は低いと思う。金正恩になっても解決は難しいだろう」と声を落とした。
韓国プレスは、現在、中国軍が北朝鮮との国境で待機しているようだ、と報道する。
中国の安全保障を担当するディーン・チェンは、「中国軍は北朝鮮に自らが入ることはないが、非難民の流出に備えている」と語る。
韓国軍も非常事態体制をとっている。
クリンガーは、「しばらくは北朝鮮の動きを注視するしかない」と語っている。
一方、経済については、経済学者のデレク・シザーズは、「戦争がない限り、金正日の死は経済には影響はない。」と断言する。
では、安全保障と経済の視点以外で、日本がしなければならないことは何か。やはり、人の問題である。
拉致された人々の救出はもちろん言うまでのないが、日本は新たに、北朝鮮からの人の流入に備えることが必要になる。不安定な政権はボートピープルを生む。
また、日米韓では、優秀な人間を友好国以外に流さない協力が必要になるだろう。ソ連が崩壊した際には、外国とネットワークがある優秀な人材はアメリカだけではなく、北朝鮮などの国にも流出した。